花火写真の撮り方講座

花火写真の撮り方講座〜第9章 完成度を高めるレタッチ術〜

おーわ
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花火系散歩屋のおーわ(@mof_mof08)です。

花火の写真を撮影するにあたって必要になる知識やテクニックについて、全9章の講座形式で紹介していく本シリーズ。

第9章では写真の完成度を高める基本的なレタッチ術について紹介していきます。

レタッチ自体は必須ではありませんが、より伝わる花火写真を目指したい方は是非ともチャレンジしていただければと思います。

花火写真のレタッチにおいて超重要なこと

さて、花火写真をレタッチを施すにあたり、皆さまに残酷な事実を1つお伝えしなければなりません。

それは…

撮影に失敗した写真は救い出せない

ことです。

レタッチは残念ながら魔法のツールではなく、あくまでも元の写真をより伝わる一枚へ仕上げるためのツールに過ぎません。

残念ながらどんなに優れたレタッチ術をもってしても、露出オーバー(白飛び)やフレームアウトといった準備や撮影における失敗は基本的にカバーしきれないのです。

>> 花火写真の撮り方講座〜第8章 主な失敗例と対策方法〜

料理と同じく、良い素材でなければ真の意味での良い味は得られないと心得た上でレタッチに挑みましょう。

花火写真にレタッチを施した際の具体的な効果

ところで、花火写真にレタッチを施すとどのような効果が得られるのでしょうか。

実際に比較していただくのが分かりやすいと思いますので、レタッチ前後の写真を用意しました。

ででん!

レタッチ前後でかなり違うのが見て取れるかと思います。(どちらの写真が雰囲気が伝わりやすいかについては個人差がありますので、ここでは詳しく言及しないことにしますw)

花火写真の基本的なレタッチフロー

花火写真における基本的なレタッチの流れは以下の通りとなります。

  1. 完成形のイメージを持つ
  2. プロファイルを設定する
  3. 階調を調整する
  4. ホワイトバランスを調整する
  5. レンズ補正を適用する
  6. トリミングを行う

レタッチを適切に施すことによって、より完成度の高い花火写真へと近づけることができますので、是非とも活用していただければと思います。

なお、本記事ではAdobe Photoshop Lightroom Classic 11.1(以下Lightroom)を使ったレタッチについて解説してまいります。

他のソフトウェアを使ってレタッチを施す場合は適宜読み替えてご活用いただければと思います。(該当する機能がない場合もあります)

完成形のイメージを決める

レタッチを施すにあたり、完成形をしっかりとイメージするようにしましょう。

花火写真の撮り方講座〜第1章 撮影における基本〜で述べたように、花火写真を撮影する最大のミッションは「伝えること」にあります。

前述で紹介した写真は以下の2点を目的としています。

  • 花火そのものの美しさを伝える
  • 視界いっぱいに花火が広がる魅力を伝える

そのために必要な主な作業は以下の2点となります。

  • 花火の色味を現実に即するように調整する
  • 花火が視界いっぱいに広がる構図にする(必要に応じてトリミング)

花火写真におけるミッションは個々で変わってくるかと思いますが、レタッチをスムーズに進めるためにも目的をはっきりさせた上でレタッチに挑むようにしましょう。

プロファイルを設定する

まずは写真の大まかな雰囲気を決めるためにプロファイルを設定していきます。

プロファイルは[基本補正] > [プロファイル]より選択できます。

Lightroomには複数のプロファイルが用意されていますが、ここでは例として撮影したカメラ(PENTAX K-1 Mark II)のプロファイルの中で最も自然に近い色合いが出せる「カメラ ナチュラル」を選択します。

お使いのカメラによってはLightromにプロファイルが登録されていないことがあります。

仕上げの雰囲気については好みによるところがありますので、ご自身がイメージする写真に合わせて適宜選択してみてください。

どれを選択すれば良いか分からないという方は、以下を軸に選んでみてください。(Adobeプリセットの場合)

  • コントラスト高め:Adobeカラー
  • コントラスト低め:Adobe標準

「ビビッド」や「風景」の名が付くプロファイルは仕上がりのコントラストが高くなりすぎるため、個人的には避けた方がよろしいかなと思います。

階調を調整する

続いて、写真の明るさやコントラスト(階調)を整えていきます。

階調は[基本補正] > [階調]より調整できます。

Lightroomにおける階調補正は全部で6つの項目があり、それぞれ以下の役割があります。

項目概要
露光量写真全体の明るさを調整する
コントラスト写真全体の濃淡を調整する
ハイライト写真の中で明るい部分のみを調整する
シャドウ写真の中で暗い部分のみを調整する
白レベル写真の中で特に明るい部分(ハイエストライト)を調整する
黒レベル写真の中で特に暗い部分を調整する

花火写真のレタッチにおいては露光量ハイライトシャドウの項目が特に重要となってきます。(黒レベルや白レベルも必要に応じて使用する場合があります)

階調を補正する前に[ヒストグラム]の右上と左上の三角マークをクリックし、ハイライトのクリッピング(白飛び警告)とシャドウのクリッピング(黒つぶれ警告)を表示しておきます。

ハイライトのクリッピング(白飛び警告)の表示手順
シャドウのクリッピング(黒つぶれ警告)の表示手順

これらを表示することで、白飛びもしくは黒つぶれをしているか否かの目安になりますので積極的に活用していきましょう。

準備がひとしきり整ったところで、まずは写真全体の明るさを露光量で調整していきます。

写真全体が暗いようであればプラス側、明るい場合にはマイナス側へスライダーを動かして補正していきます。(ここでは全体的に暗いので+1.50の補正をかけています)

写真全体の明るさを整えたら、ハイライトを調整していきます。

花火の色を出すための肝となる作業で、花火が明るい(白っぽい)場合にはマイナス側、暗い場合にはプラス側へスライダーを動かして補正していきます。(ここでは花火が明るいため-90の補正をかけています)

ハイライトを下げ過ぎると花火の煌めきが著しく欠けてしまいますので、先に紹介したハイライトのクリッピング(白飛び警告)が黒色になるぐらいに調整するのが個人的におすすめです。

続いて、シャドウの調整を行なっていきます。

花火写真におけるシャドウの調整は大きく2つの役割を果たします。

  • 暗めの花火の明るさを持ち上げる
  • 副題の明るさを持ち上げる

今回はやや暗めの地面と打ち上げ花火の明るさを持ち上げるため、シャドウを+70に補正していきます。

シャドウを上げ過ぎると暗部にノイズが乗りやすくなります。

特にダイナミックレンジが狭いカメラ(イメージセンサーの小さなカメラ)を使って撮影した写真をレタッチする場合には注意が必要です。

白レベルと黒レベルについては今回の例では調整していませんが、以下のような場合に活用してみてください。

  • 白レベル:街灯などの強烈な点光源の明るさを調整する
  • 黒レベル:夜空の黒色を調整する

適切に階調(特に露光量、ハイライト、シャドウ)を調整することで、より伝わる花火写真へと近づけられますので、しっかりと調整していきましょう。

ホワイトバランスを調整する

花火の色味を整えるためにホワイトバランス(色温度、色かぶり補正)を調整します。

ホワイトバランスは[基本補正] > [WB]より補正できます。

ホワイトバランスには「色温度」と「色かぶり補正」という二つのパラメーターがありますが、調整するにあたっては以下を基準にすると自然な色味へ近づけることができます。

パラメーター備考
色温度
  • 写真が青っぽい:プラス補正
  • 写真が黄色っぽい:マイナス補正
色かぶり補正
  • 写真が緑っぽい:プラス補正
  • 写真が赤っぽい:マイナス補正

カメラ側である程度のホワイトバランスを設定するのが理想ですが、花火写真の撮り方講座〜第4章 カメラの設定〜で触れているように、撮影中に変更するのは極めて困難です。

ホワイトバランスを調整することで意図する色味へと近づけられますので、しっかりと調整していきましょう。(今回の例ではカメラ側の設定が上手くハマったため調整していません)

レンズ補正を適用する

レンズによって生じる歪みや周辺減光を補正するため、レンズ補正を適用していきます。

[レンズ補正] > [プロファイル]より「プロファイル補正を使用」にチェックを入れます。

特に広角系のレンズを使用した場合は歪みによる影響が大きくなりやすいため、忘れずにレンズ補正を行っておきましょう。

広角系レンズを使って近距離かつ極端なアングルで撮影するとパースによる歪みが発生しますので、可能な限り撮影の段階で防ぐことをおすすめします。

なお、パースによって発生した歪みはレンズ補正だけでは対応できないため、別途ゆがみを補正する必要があります。

トリミングを行う

ひと通りの調整が終わったら、必要に応じてトリミングを行います。

トリミングは写真全体の構図を整えたり、各種SNSへの掲載に適した比率にする際に有効です。

Lightroomにおけるトリミング手順は以下の通り。

  1. [切り抜き]を選択
  2. 縦横比を選択(自由に比率を変えたい場合は鍵マークを外す)
  3. 表示された太線部分をドラッグアンドドロップして切り抜き範囲を調整
  4. 枠内をドラッグアンドドロップして切り抜き位置を調整
  5. [完了]をクリック

トリミングは写真全体の構図を整えたり、各種SNSへの掲載に適した比率にする際に有効です。

参考までにSNSへ花火写真を掲載する際の縦横比は個人的に以下がおすすめです。

SNS縦構図横構図
Twitter4:53:2もしくは16:9
Instagram4:5もしくは1:11:1もしくは5:4

Twitterの場合はサムネイル、Instagramの場合はスマートフォン(縦向き)での閲覧を意識すると見栄えが良くなります。

合成の活用と注意点

花火写真においては合成(コンポジット)が役立つ場合があります。

特に次々と花火が打ち上がるスターマインで1枚撮りをすると、花火の色合いによっては露出オーバーすることが多々あります。(花火写真の撮り方講座〜第8章 主な失敗例と対策方法〜でも触れていますが、特に中間色や銀冠といった明るい花火では露出オーバーのリスクが高い)

そのような場合は1シーンを複数枚に分けて撮影した後、Photoshopなどを用いて合成することで1枚の綺麗な花火写真として仕上げられます。

具体的な合成の手順については以下の記事で紹介していますので、参考にしていただければと思います。

>> 花火写真を合成する(重ねる)方法と注意点

ただし、むやみやたらに合成すると花火の魅力が伝わらなくなってしまうので、ご利用は計画的に…。

まとめ

本記事では花火写真におけるレタッチ術について紹介してまいりました。

改めてざっくりまとめると以下の通りとなります。

  • レタッチはあくまでも花火写真の魅力を最大限に引き出すツールで、露出オーバーや準備・撮影でのミスはレタッチで対処できない
  • 特に階調(露光量、ハイライト、シャドウ)とホワイトバランスの調整が肝

レタッチは必須ではありませんが、より伝わる花火写真を目指すにあたって活用していただければと思います。

ということで、全9章にわたってお届けしてきた花火写真の撮り方講座はこれにてお開き。

花火写真の撮影をこれから始めてみたい、または現在進行形で撮影しているけどなかなか満足に撮影できていない方の助けになれば幸いです。

この記事を書いた人
おーわ
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花火系散歩屋
花火系散歩屋。関東地方を中心に年間20〜50回の花火を観覧・撮影しながら、各種メディア(SNS、ブログ)を通じて花火の様子をお届けしています。
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